2012年5月24日木曜日

美しさがなければ

[記者・藤原]

 大相撲夏場所千秋楽――大相撲はスポーツではない。歌舞伎などとおなじ興行である。興行である以上「形」があり、その形は美しくなければならない。髷(まげ)よりも高く足を跳ね上げ、爪先や指先にまで神経を行き渡らせ四股を踏み、締込みのほかなにも体につけない。その立ち居振る舞いと神々しいほどの肉体とを融合させ、芸の域にまで高めた者が大関の座にあるはずだ。
 幕内優勝決定という最大事を前に、全治3週間の損傷とはいえ当日になってその大関が土俵に上がらないとは。大相撲人気の低迷はなにも日本人力士の力量のなさだけではなく、土俵内外に連綿と続く美しさが失われてきたことが大きな要因なのだ。


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